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2008年8月

「残虐記」桐野夏生

残虐記 (新潮文庫) 残虐記 (新潮文庫)

著者:桐野 夏生
販売元:新潮社
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オススメ度★★★★☆

タイトルからしてなんか異様な雰囲気を出してる。「残虐記」って、ずいぶん思い切ったタイトルをつけるもんだ。

自分は過去に少女誘拐監禁事件の被害者だったという手記を残して作家が消えた。その手記には被害者の少女と犯人であるケンジの異様な生活がつづられていた。二人だけの生活には何があったのか。

少女期の誘拐事件という題材がまず際立っていて、読み始めは結構えぐい話なのかなって読んでたけど、思ったほどではなかった。ただ、とにかく異様な緊張感に満ちたものだっていうのが素直な感想。異様で重苦しい空気を吐き出しているようだ。

誘拐犯であるケンジを理解することは難しい。だって誘拐、それも相手が少女となると当然普通じゃない。そして、誘拐された側の少女が理解することは不可能に近いだろう。しかし、少女は時間をかけて男の心情を想像し物語を作り上げていった。想像が感情というものを育てるのだろうか。普段意識した事はないが、想像することで楽しくも悲しくも怖くもなる。少女はケンジに特別な思いを抱く。その感情は、ときにはケンジを唯一の理解者であると思ってしまうほどの、不安定な心は読んでいてスリリングでもあり、異様でもあった。

この手記を残し、作家は姿を消してしまう。いったいどこに行ったのかは最後まで謎である。しかし、彼女の心にケンジという存在が少女期からずっとあった、ということは・・・と、この先はご想像にお任せしますってことかな。

ただ、実際に同じような事件が起こってる中、あえてこのような事件を小説の題材としたことに関しては、批判のようなものもあると思う。

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「魔王」伊坂幸太郎

魔王 (講談社文庫) 魔王 (講談社文庫)

著者:伊坂 幸太郎
販売元:講談社
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オススメ度★★★★☆

はい、「魔王」です。大野君が出てたドラマの「魔王」とは違うのであしからず。。。買った理由は単純です。「魔王」って強そうじゃないですか。なので買いました(笑)

会社員の安藤は弟の純也と二人暮らしをしている。ある時、自分の念じた言葉を相手が口に出すという能力があることに気づき、一人の男に近づいていく。

自分の念じた言葉を相手が必ず口に出す。いや、めっちゃほしい超能力だ(?)!そうすれば、あんなこともこんなことも・・・。あ、いたずらには使いません、たぶん(笑)なんで彼にそんな力が備わったのか、ということは書かれてはいない。しかし、その力を何かのために使わなくてはと思った安藤は周囲の人たちの雰囲気に違和感を覚え始める。

その時期に首相となったのは犬養という人間だった。ズバズバと物を言い、大衆の支持を集めていくその男に、安藤は危機感を持つ。

自分たちはいとも簡単に統一されてしまう。ファシズム(本書では「統一していること」との意味と書かれている)。この言葉を聞いてまず思い浮かべるのが第二次世界大戦のナチス政権、ヒトラーであろう。彼は行ったのは、簡単にいえば独裁政治。安藤は犬養首相が行おうとしていることは独裁政治だと思ったのだろう。そして、周りに流されることの恐ろしさを知る。彼はこう思う、「魔王がいる」。

安藤の能力を知り、危険人物かと思ったのか、彼は命を狙われる。それでも彼は、犬養をどうにかしようと立ち上がるのだが・・・。

一つにまとめられることの恐ろしさ、それに気づき必死に止めようとする安藤。やはり、自分たちは、一人一人、自らの考えを持つことの必要性があるのだろう。国民が一つの考えに統一された時、そこに個人という概念はあるのか。ファシズムが国を支配したら、それこそ戦争なんてすぐに起こるんじゃないか。国民よ流されるな!!そんなことを考えさせられるとともに、伊坂幸太郎お得意のエンターテイメント性もあり、読み応えがあってよかった。

続編でもある「モダンタイムズ」は「魔王」の世界から50年後の日本を描いているらしい。早く読みたいものだ。

同時収録の「呼吸」では、その5年後の世界が描かれている。おそらく「モダンタイムズ」に関わってくるのはこちらの話の方が強いだろう。兄同様に不思議な力を手に入れた、弟の純也。その力をどのように使うのか。日本はどこに向かおうとしているのか。

これを書いてたら、無性に「モダンタイムズ」が読みたくなってきた。

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「夢を実現する戦略ノート」ジョン・C・マクスウェル

夢を実現する戦略ノート 夢を実現する戦略ノート

著者:ジョン・C.マクスウェル,齋藤 孝
販売元:三笠書房
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成功するにはどのような心構えを持つべきなのか。ということを、本書では解説している。

特に以下の二点は印象に残った。

・いったん何かにこころを集中させるかを決めたら、そのために何を捨てるかを決めなければならない。ある程度の犠牲を払わずして、成功はありえない。

・成功できない人は自分の人生に対する責任を回避しようをする。しかし、成功する人は、積極的に前進し、自分の考えと行動に対して全面的に責任を負わない限り、何もなし得ないことを知っている。

リスクなしに成功はない。積極的に前へ進み、その行動に対して自分がきちんと責任を持つことで、自分の器を大きくするきかっけを掴めるのだろう。

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「リアルワールド」桐野夏生

リアルワールド (集英社文庫(日本)) リアルワールド (集英社文庫(日本))

著者:桐野 夏生
販売元:集英社
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オススメ度★★★★★

最近この人の本がマイブームだ。この人の作品はいつも毒々しくて、痛々しい、でもそんな作品に引き込まれてしまう。とても魅力的な作家さんだと思う。物事はひょんなことからその始まりを迎えるものだ。何かを起こすにはそれにつながる行動が必ずある。しかし、それが何を起こすかは大抵わからないものだ。今回の場合は、十四子が最初に事件直後にミミズを偶然出会ったことを隠したことが始まりだった。

物語は高校三年生のホリニンナこと山中十四子、男勝りなユウザン、頭がよくクールなテラウチ、可愛くて陽気なキラリン。ある日、山中十四子の隣家の息子が母親を殺して逃亡した。四人の女子高生はその殺人犯である、通称ミミズ、接触していく。遊び半分に彼を逃亡させようとすることが、彼女たちに取り返しのつかない終末へと向かわせる。

桐野夏生はいつも人間の本質を描こうとしているように思う。人が心の奥に秘めている思いや欲望を明らかにすることで、人とはこんなにも醜いものなのかと感じさせられる。この作品も平凡な生活に身を置く普通の女子高生の心の奥に潜むものの姿を描いている。

母親を殺して逃げ出したミミズは山中十四子の自転車と携帯電話を盗み逃亡する。そして彼女の携帯電話に入っている女子に電話をかけ他の三人と接触していく。殺人犯との電話。それは平凡な女子高生にはとても興味をそそられるちょっとした冒険だった。物珍しさ、これは人に自慢できるかも知れない、こんな貴重な体験をみすみす逃すのは惜しい。そんな思いに駆られることは、日常を生きていく中でだれしもが抱く感情であり、多かれ少なかれ皆に共通するものだと思う。彼女たちもその例外ではない。だが、その対象に対する受け入れ方は人によって違うもの。

ミミズと接触していくことによって彼女たち四人のキャラクターが一層際立っていく。ある者は逃亡を助け、ある者は行動を共にする。傍観者の立場から事件を見る者、そして真っ向からミミズに反論する者。四人それぞれの思いがそれぞれの主観から描かれる構成は物語に厚みを加え、とても読み応えがあるものにしていく。

この四人の中でもテラウチは特に印象に残った。彼女はミミズを「取り返しのつくことをした」単純な奴と批難する。では「取り返しのつかないこと」とは?それは彼女が抱えた闇であって、四人の行く末を決める決定打となった。

最後の章を読み終わって、ただ、空しい。だけど、テラウチのいう「取り返しのつかないこと」は自分には難しすぎた。恐らく、僕の思う「取り返しのつかないこと」と違うから違和感を覚えたんだな。。。

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