カテゴリー「 桐野夏生」の記事

「残虐記」桐野夏生

残虐記 (新潮文庫) 残虐記 (新潮文庫)

著者:桐野 夏生
販売元:新潮社
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オススメ度★★★★☆

タイトルからしてなんか異様な雰囲気を出してる。「残虐記」って、ずいぶん思い切ったタイトルをつけるもんだ。

自分は過去に少女誘拐監禁事件の被害者だったという手記を残して作家が消えた。その手記には被害者の少女と犯人であるケンジの異様な生活がつづられていた。二人だけの生活には何があったのか。

少女期の誘拐事件という題材がまず際立っていて、読み始めは結構えぐい話なのかなって読んでたけど、思ったほどではなかった。ただ、とにかく異様な緊張感に満ちたものだっていうのが素直な感想。異様で重苦しい空気を吐き出しているようだ。

誘拐犯であるケンジを理解することは難しい。だって誘拐、それも相手が少女となると当然普通じゃない。そして、誘拐された側の少女が理解することは不可能に近いだろう。しかし、少女は時間をかけて男の心情を想像し物語を作り上げていった。想像が感情というものを育てるのだろうか。普段意識した事はないが、想像することで楽しくも悲しくも怖くもなる。少女はケンジに特別な思いを抱く。その感情は、ときにはケンジを唯一の理解者であると思ってしまうほどの、不安定な心は読んでいてスリリングでもあり、異様でもあった。

この手記を残し、作家は姿を消してしまう。いったいどこに行ったのかは最後まで謎である。しかし、彼女の心にケンジという存在が少女期からずっとあった、ということは・・・と、この先はご想像にお任せしますってことかな。

ただ、実際に同じような事件が起こってる中、あえてこのような事件を小説の題材としたことに関しては、批判のようなものもあると思う。

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「リアルワールド」桐野夏生

リアルワールド (集英社文庫(日本)) リアルワールド (集英社文庫(日本))

著者:桐野 夏生
販売元:集英社
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オススメ度★★★★★

最近この人の本がマイブームだ。この人の作品はいつも毒々しくて、痛々しい、でもそんな作品に引き込まれてしまう。とても魅力的な作家さんだと思う。物事はひょんなことからその始まりを迎えるものだ。何かを起こすにはそれにつながる行動が必ずある。しかし、それが何を起こすかは大抵わからないものだ。今回の場合は、十四子が最初に事件直後にミミズを偶然出会ったことを隠したことが始まりだった。

物語は高校三年生のホリニンナこと山中十四子、男勝りなユウザン、頭がよくクールなテラウチ、可愛くて陽気なキラリン。ある日、山中十四子の隣家の息子が母親を殺して逃亡した。四人の女子高生はその殺人犯である、通称ミミズ、接触していく。遊び半分に彼を逃亡させようとすることが、彼女たちに取り返しのつかない終末へと向かわせる。

桐野夏生はいつも人間の本質を描こうとしているように思う。人が心の奥に秘めている思いや欲望を明らかにすることで、人とはこんなにも醜いものなのかと感じさせられる。この作品も平凡な生活に身を置く普通の女子高生の心の奥に潜むものの姿を描いている。

母親を殺して逃げ出したミミズは山中十四子の自転車と携帯電話を盗み逃亡する。そして彼女の携帯電話に入っている女子に電話をかけ他の三人と接触していく。殺人犯との電話。それは平凡な女子高生にはとても興味をそそられるちょっとした冒険だった。物珍しさ、これは人に自慢できるかも知れない、こんな貴重な体験をみすみす逃すのは惜しい。そんな思いに駆られることは、日常を生きていく中でだれしもが抱く感情であり、多かれ少なかれ皆に共通するものだと思う。彼女たちもその例外ではない。だが、その対象に対する受け入れ方は人によって違うもの。

ミミズと接触していくことによって彼女たち四人のキャラクターが一層際立っていく。ある者は逃亡を助け、ある者は行動を共にする。傍観者の立場から事件を見る者、そして真っ向からミミズに反論する者。四人それぞれの思いがそれぞれの主観から描かれる構成は物語に厚みを加え、とても読み応えがあるものにしていく。

この四人の中でもテラウチは特に印象に残った。彼女はミミズを「取り返しのつくことをした」単純な奴と批難する。では「取り返しのつかないこと」とは?それは彼女が抱えた闇であって、四人の行く末を決める決定打となった。

最後の章を読み終わって、ただ、空しい。だけど、テラウチのいう「取り返しのつかないこと」は自分には難しすぎた。恐らく、僕の思う「取り返しのつかないこと」と違うから違和感を覚えたんだな。。。

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「東京島」桐野夏生

東京島 東京島

著者:桐野 夏生
販売元:新潮社
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オススメ度★★★★★

とりあえずの第一印象(本に第一印象もなにもないけど^^:)、「ん、写真集?東京にある島の?」。で、桐野夏生の文字を発見しやっと小説だとわかる。というのが最初の感想でした。。。

無人島に漂流した31人の男と1人の女。皆は無人島をトウキョウ島と名付ける。絶望に打ちひしがれながらも島での生活めたたった一人の女の清子と男達は本能をさらけ出していく。天国か、地獄か、そしれ32人の人間たちははたして脱出できるのか・・・

なんか帯に書いてある「食欲と性欲と感情をむき出しに」ってのがよーくわかった。ホントにそんな感じ。

清子は島でたった一人の女という立場を利用し他の若い男と遊ぶことに夢中になる。人間は文明を失ったら自分勝手に本能で生きるしかないのだろうか。文明は本能を抑制するブレーキなのかもしれないと思った。ただ清子の夫をくじ引きで決めるのとかはなんか単純すぎて面白かったけど。

権力が何人もの人間に移り、それによる周りの態度の変わりようも生々しかった。強いものが弱いものを束ね、そこに裏切りや衝突があるというのはどこの世界でも同じなのだろう。無人島だがちゃんと人間の世界を反映させているところや、生への執着を感じさせるところは桐野夏生の作品らしいと思った。この人はやはり人間の奥深くにあるドロドロとした心を描くのがうまい。

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「グロテスク」桐野夏生

グロテスク〈上〉 (文春文庫)グロテスク〈下〉 (文春文庫)

グロテスク〈上、下〉 (文春文庫)

著者:桐野 夏生
販売元:文藝春秋
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オススメ度★★★★★

昔、夜の渋谷の街で女の人に声をかけられたことがある。深夜だったし友達とカラオケで朝まで過ごそうとしていた時だった。その時は怖さと気味悪さで小走りで逃げたのだった。おそらく声をかけてきた女の人は娼婦だったのだろう。あの人は今どうしてるんだろう。この本を読んでふと思い出した。

文庫本では上下巻に分かれているこの本は、主に4人の女と彼女達をとりまく男達を20年以上の月日にわたって描いている。恐ろしいほどの美貌を持ったユリコ、そして彼女の姉、天才的な学力を持つミツル、高校でいじめられていた和恵。娼婦をしていたユリコは殺され、その後同じく娼婦をしていた和恵も殺された。いったいなぜ二人は殺されたのか、そして残された者は何を思うのか。

これは東京電力のOL殺人事件という実話を元に書かれている。詳しくは知らないが、そのOLが昼は会社員で夜は娼婦をしていたということ。どうして彼女は娼婦をしていたのか、この本はその真意に迫って書かれているように感じた。

この話の序盤で特に目立つのはユリコの完璧なまでの美貌だ。姉は彼女に異常な恐怖を持ち怪物だと言い、和恵はその美貌に強くひかれストーカーまがいの行為をし、周囲の人間は驚きの目で彼女を見る。そして男達は彼女を欲する。そんなユリコは15歳にして自分が異常な性欲を持った人間だと知りいずれは娼婦へと続く道へと進んでいってしまう。その圧倒的な存在の前には誰もが小さくなってしまい、周りの人達をバラバラに引き裂いていく。

そんなユリコとは正反対の姉は自らの悪意を磨くことで高校から区役所でアルバイトの日々を送る中年女になるまで生き抜いてきた。そこには妹のユリコに対する大きな嫉妬が隠されていたのだろう。もし自分に手の届かないほどの完璧な兄弟がいたとしたら、嫉妬するだろうか。多分・・・多かれ少なかれしてしまうだろう。自分を比べてしまい、劣等感を感じ心に壁を作ってしまうかもしれない。ユリコの容姿は姉にとって圧倒的な嫉妬を生むほどの距離があったのだろう。ユリコが死んでも悲しまないほどだから相当だ。

彼女の恐ろしいまでの悪意、それは人を怪物に仕立て上げるが自分も怪物にしていってしまったのではないだろうか。彼女は否定するだろうが私はユリコもミツルも和恵も、そしてユリコの姉も怪物だと思う。でもラストは・・・それでいいの?って彼女に聞きたい。結局はそうなるのか、ってなんか残念だったな。

で、読んでて一番むなしいなって思ったのは和恵だ。高校の時からいじめられてた彼女は会社でも周りから見向きもされない。そんな彼女を壊していったのは、高校時代にユリコの姉に言われた「痩せると綺麗よ」の一言。人は誰かの忠告や説教だったり、言われたことすら忘れてしまってても無意識に意識してしまうことってあるのだろう。和恵が壊れていき周りから化け物のような目で見られていく様は読んでいて痛々しかった。

自分はもっと目立ちたい、ちやほやされたくて仕方ない。だから娼婦をやるんだ。私って娼婦なのよ、すごいでしょ?って。周りの人間に自分を見てほしくて仕方ない。安い金でも何でもする。相手はもう誰だっていい。でも、優しくしてほしい。なんかすごい寂しい人だ。

読んだあと、ため息が出た。人間の、濃いブラックな面を見た気がした。私は男だが、女の人が読んだらさらに大きなため息が出るだろうなと思う本だった。

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